介護経営情報

2025年4月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう②

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催

年度が変わり、夏にかけて行われる参議院選挙を控え、各党にて社会保障領域の公約検討が続いている2025年4月。そんな折、財政的観点から「社会保障関連分野においても聖域をつくらず、抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が4月23日に開催されました。

“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」の中で特に介護事業者に深く関連するかもしれない論点を抜粋し、お届けしてまいります(先月は前半の内容5点をお伝えさせていただきましたが、今月は先月に続き、6点の内容を抜粋してお伝えいたします)。

財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは(後半)

では、早速、中身に移ってまいりましょう。
ここでは先月同様、本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。

先ずは1つ目、職場環境整備の論点と改革の方向性(案)に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ 介護現場では、ICT等のテクノロジーの導入や、社会福祉連携推進法人の仕組みの活用により、業務の効率化による職員の負担軽減や介護人材の確保・育成に取り組み、利用者満足度の向上や職員負担の軽減等による離職率の低下などの成果を上げている好事例も出ている。

【改革の方向性】(案)
○ 引き続き、処遇改善加算の取得促進とあわせて、2024年度補正予算で措置した介護人材確保・職場環境改善等事業(806億円)や介護テクノロジー導入・協働化等支援事業(200億円)等も活用し、職場環境の整備や生産性向上等に取り組むことで、賃上げとともに人材の定着を推し進めるべき。

2つ目は、「インセンティブ交付金の活用」に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ 一人当たり介護給付費や要介護認定率は、年齢構成等を調整してもなお大きな地域差が存在。
○ これまで、インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金及び介護保険保険者努力支援交付金)について、地域における介護費抑制・地域差縮減等に繋がるよう、評価指標の見直しやアウトカム指標・成果指向型への重点化を行ってきた。

【改革の方向性】(案)
○ 引き続き、成果志向型の取組に対するインセンティブ付を強化し、地域の状況に応じた効果的な取組を促進することで、介護費抑制・地域差縮減等をはかるべき。

3つ目は、「訪問看護の適正化」に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ サ高住・有料老人ホームにおいて訪問看護費用が極端に高額となっている事例について実態把握・適正化を行うべきとの指摘がなされてきたところ。

【改革の方向性】(案)
○ 訪問看護に関する診療報酬の適正化のため、事業者への指導監査の強化に加え、同一建物減算の更なる強化など報酬上の対応を検討すべき。

4つ目は、「軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行」に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ 要支援者に対する訪問介護・通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行(2018年3月末に移行完了)。
○ 今後も介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和等を通じて、地域の実情に合わせた多様な人材や資源の活用を図り、必要なサービスを効率的に提供するための枠組みを構築する必要。

【改革の方向性】(案)
○ 介護の人材や財源に限りがある中で、要介護者の中でも専門的なサービスをより必要とする重度の方へ給付を重点化していくとともに、生活援助等は地域の実情に応じて効率的に提供していく必要。このため、軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的に、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすべきである。

5つ目は、「介護保険の利用者負担(2割負担)の見直し」に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ 介護保険制度においては、制度創設時、利用者負担割合を一律1割としていたが、保険料の上昇を可能な限り抑えながら、現役世代に過度な負担を求めず、高齢者世代内において負担の公平化を図るため、「一定以上所得のある方」(第1号被保険者の上位20%相当)について負担割合を2割、さらに、「現役並みの所得」を有する方の負担割合を3割に引き上げてきた。

【改革の方向性】(案)
○ 負担能力に応じて、増加する介護費をより公平に支え合う観点から、「改革工程」に沿って、 2割負担の対象者の範囲拡大について早急に実現すべき。また、医療保険と同様に、利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことについても検討していくべき。

最後、6つ目は「ケアマネジメントの利用者負担の導入」に関する論点と改革の方向性(案)についてです。

【論点】
○ 介護保険サービスの利用にあたっては、一定の利用者負担を求めているが、居宅介護支援については、制度創設時以来、ケアマネジメントの利用機会を確保する観点等から利用者負担を取らない取扱いとされてきた。しかし、介護保険制度創設から20年以上が経ち、現状では、ケアマネジメントに関するサービス利用が定着。利用者が本来負担すべきケアマネジメントに係る費用を現役世代の保険料で肩代わりし続けることは、世代間の公平の観点からも不合理。
○ また、ケアマネジメントについて利用者負担を取らない取扱いは、利用者側からケアマネジャーの業務の質へのチェックが働きにくい構造。保険者によるケアマネジメントの質の評価とあわせて、利用者自身が自己負担を通じてケアプランの質に関心を持つ仕組みとする必要。

【改革の方向性】(案)
○ 質の高い介護サービスを提供する上で、利用者の立場に立ってケアプランを作成するケアマネジャーは重要な役割を果たしており、公正・中立なケアマネジメントを確保する観点から、質を評価する手法の確立や報酬への反映と併せ、居宅介護支援に利用者負担を導入することで、質の高いケアマネジメントが選ばれる仕組みとする必要。

国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、2カ月にわたり、財政制度分科会内の資料より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※引用元資料はこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20240416zaiseia.html

(2025-5-29)

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